04) 地之巻 ★ 大工の法則を通して、サッカーの法則をつかむ

サッカー語訳

建物の設計意図や全体構造はもちろんディテールも正しく把握し、大工たちに適切な仕事を割り振り家を完成させるのが、大工の棟梁の役割です。そして、組織が置かれている環境と組織の内部の状態を把握し、組織を正しい方向に導くのが、あらゆる組織リーダーの役割です。大工の棟梁もサッカー組織のリーダーも、その役割は同じと言えるでしょう。

家を建てる場合は、適切な材木を適切な場所に使うことが大切です。まっすぐで節もなく見た目も美しい材木は目に付く場所の柱にし、少し節があっても強い材木は見えない場所の柱にし、強度が小さいが節がなく見映えの良い材木は敷居や鴨居や戸や障子に、というように、それぞれの特徴を把握して活用するのです。節やゆがみがあっても強い材木を、建物全体の強度に影響する場所に使えば、建物は長持ちします。節が多くゆがみもあり強度も足らない材木でも足場として、後には薪として役立てることができます。

棟梁が大工たちの分担を決めるときには、それぞれの能力に応じて、床廻り、戸や障子、敷居、鴨居、天井など、的確な持ち場を与えます。そして、能力の足りない者には根太(ねだ)を張ってもらい、さらに能力の落ちる者には楔を削ってもらうというように、仕事内容も能力に応じたものにすれば、全体の仕事がスムーズに流れます。集中度、効率、丁寧さ、分析力と判断力、モチベーションの高さ、仕事の勢い、限界といったことを、棟梁は常に把握しておく必要がありますが、それは、サッカー組織のリーダーに求められる能力でもあります。

大工は、きちんと整備した道具と作業に合わせて自分が制作改良した道具をセットとして持ち歩き、棟梁の指示に従って柱や虹梁(こうりょう)を手斧(ちょうな)で削り、床棚(とこだな)を鉋(かんな)で削り、透かし物や彫り物も作り、寸法に合わせて整え、隅々や細かなところに至るまで、手際よく仕上げます。大工の法則とは、その過程全体に関わるものです。そして、様々な大工仕事を経験の中で覚え、建物全体の構造についてもわかるようになった大工だけが、棟梁となる資格を得ます。

また、切れの良い道具を持ち、それらを暇さえあれば整備することは、大工の大切な習慣ですし、そういう道具を使って、仏壇、書棚、机から、行灯、まな板、鍋蓋に至るまで、何でも強く美しく仕上げるのが大工の仕事です。

サッカープレーヤーに求められることも同様です。大工の仕事に要求されるのは、歪みの無いこと、隙間の無いこと、表面が滑らかなこと、仕上げのときに傷をつけないこと、後から隙間が生まれないことですが、サッカーにとってそれらが何に当たるのか、ここに書かれている一言一句にじっくりと向き合い、吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 兵法の道、大工にたとへたる事。

大将ハ、大工の棟梁として、天下のかねをわきまへ、其国のかねを糺し、其家のかねをしる事、棟梁の道也。大工の棟梁ハ、堂塔伽藍のすみかねを覚へ、くうでんろうかくの指圖をしり、人々をつかひ、家々を取立事、大工の棟梁、武家の棟梁も同じ事也。

家を立るに、木くばりする事、直にして節もなく、見付のよきを表の柱とし、少ふしありとも直に強きを裏の柱とし、たとひ少弱くとも、節なき木のミさまよきをバ、敷居、鴨居、戸障子と、それ/\につかひ、節有とも、ゆがみたりとも、強き木をバ、其家のつよみ/\を見分て、能吟味してつかふにおゐてハ、其家ひさしくくづれがたし。又、材木のうちにしても、節おほく、ゆがミてよハきをバ、あしゝろともなし、後には薪ともなすべき事也。

棟梁におゐて、大工をつかふ事、其上中下を知り、或ハ床まはり、或ハ戸障子、或ハ敷居、鴨居、天井已下、それ/\につかひて、あしきにハ、ねだをはらせ、猶悪きにハ、くさびを削せ、人を見分てつかヘバ、其渉行て、手ぎハ能もの也。はかのゆき、手ぎハよきと云所、物ごとをゆるさゞる事、たいゆうを知る事、氣の上中下を知事、いさみをつくると云事、むたいを知と云事、か様の事ども、棟梁の心持に有事也。兵法の利、かくのごとし。

兵法の道、士卒たるものハ、大工にして、手づから其道具をとぎ、色々のせめ道具をこしらへ、大工の箱に入てもち、棟梁の云付る所をうけ、柱、かうりやうをも、てうなにてけづり、床棚をもかんなにて削り、すかし物、彫物をもして、能かねを糺し、すミ/\めんだうまでも、手ぎハよく仕立所、大工の法也。大工のわざ、手にかけてよく仕覚へ、すミかねをよくしれば、後は棟梁となるもの也。

大工の嗜、能きるゝ道具をもち、すき/\にとぐ事肝要也。其道具をとつて、御厨子、書棚、机つくゑ、又は行燈、まな板、なべのふた迄も、達者にする所、大工の専也。

士卒たる者、此ごとくなり。能々吟味有べし。

大工の嗜、ひづまざる事、とめを合する事、かんなにて能削事、すり(ミ*)かゝざる事、後にひすかざる事、肝要也。此道を学ばんと思はゞ、書顕す所の一こと/\に心を入て、よく吟味有べき者也。

 

注釈

特にありません。


04. 4月 2012 by outsidervoice
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