51) 火之巻 ★ 3つの先(せん)

サッカー語訳

戦闘開始時における主導権の獲得を、先(せん)という一字で表します。その3種とは、自分から仕掛けていく時の懸(けん)の先、敵から仕掛けてきた時の待(たい)の先、自分も敵も仕掛け合う時の躰々(たいたい)の先です。どういう戦闘でも、この3種以外の先はありません。先次第で、開始直後に勝負が決してしまうこともありますから、これらの先はサッカーにおいて最も重要です。その先に至る方法にはいろいろとあるのですが、共通する必要要素は、正しい状況判断と、敵の意図を見抜くこと、そして「二天一流」の知恵です。

まずは、自分から仕掛けた時の懸の先のいくつかのパターンについて記していきます。静かにしておいて、突然スピードを上げる先。動作は速く、心は冷静沈着に保っておく先。強い気持ちで、敵に少しだけ早足に近づき、近づいた途端、猛烈に攻めたてる先。全てを忘れ一心に、最初から最後まで同じプレーを突き通して、敵を圧倒する先。これらのどれもが、懸の先です。

次に、敵が仕掛けてきた時の待の先について。敵の仕掛けに反応することもできない弱々しい存在に見せておいて、敵が近づいてきたらずんと勢いよく離れ、今度は反対に飛びかかる素振りを見せ、敵が動揺した瞬間を見逃さず、一気に強く出る先。あるいは、敵が向かってきたら、それ以上の勢いで向かって行き、敵が思わず勢いを抑える瞬間を狙う先。

最後に、お互いが仕掛け合う時の躰々の先について。素早く向かってくる敵に対し、自分はスピードではなく強さを保つことに集中し、近づいた敵が強い構えに対しスピードを落とすのを狙って、攻勢に出る先。ゆっくりと向かってくる敵に対しては、軽い身のこなしで素早く近づき、敵の出方を伺うプレーを仕掛けながら隙を狙う先。

これらの先について細かく書くことは難しいのですが、ここに書いてあることを参考に、自分でいろいろと工夫をしてみてください。先は、先制攻撃の場合の懸の先だけでばないのですが、できれば、自分から仕掛けて敵を翻弄したいものです。いずれにしても、先による勝利とは、サッカーの知恵を使って得る勝利のひとつです。日々、鍛錬を続けてください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 三つの先と云事。

三つの先、一つハ我方より敵へかゝる先、けんの先といふ也。又一つハ、敵より我方へかゝる時の先、是ハたいの先と云也。又一つハ、我もかゝり、敵もかゝりあふときの先、躰々の先と云。これ三つの先也。何の戦初にも、此三つの先より外ハなし。先の次第をもつて、はや勝事を得ものなれバ、先と云事、兵法の第一也。此先の子細、さま/\有といへども、其時々の理を先とし、敵の心を見、我兵法の智恵をもつて勝事なれバ、こまやかに書分る事にあらず。

第一、懸の先。我懸らんとおもふ時、静にして居、俄にはやく懸る先、うへを強くはやくし、底を残す心の先。又、我心をいかにも強くして、足ハ常の足に少はやく、敵のきハへよると、早もミたつる先。又、心をはなつて、初中後同じ事に、敵をひしぐ心にて、底まで強き心に勝。是、何れも懸の先也。

第二、待の先。敵我方へかゝりくる時、少もかまはず、よはきやうにミせて、敵ちかくなつて、づんと強くはなれて、とびつくやうにミせて、敵のたるミを見て、直に強く勝事。これ一つの先。又、敵かゝりくるとき、我もなを強くなつて出るとき、敵のかゝる拍子の替る間をうけ、其まゝ勝を得事。是、待の先の理也。

第三、躰々の先。敵はやく懸るにハ、我静につよくかゝり、敵ちかくなつて、づんとおもひきる身にして、敵のゆとりのミゆる時、直に強く勝。又、敵静にかゝるとき、我身うきやかに、少はやくかゝりて、敵近くなつて、ひともミもみ、敵の色にしたがひ、強く勝事。是、躰々の先也。

此儀、こまかに書分けがたし。此書付をもつて、大かた工夫有べし。此三つの先、時にしたがひ、理にしたがひ、いつにても我方よりかゝる事にハあらざるものなれども、同じくハ、我方よりかゝりて、敵を自由にまはしたき事也。何れも先の事、兵法の智力をもつて、必勝事を得る心、能々鍛錬有べし。

 

注釈

特にありません。


06. 4月 2012 by outsidervoice
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