53) 火之巻 ★ 渡(と)を越す

サッカー語訳

陸と陸とに挟まれた海峡の中には長さが160~200キロに及ぶものがありますが、それを渡(と)と言います。その長さゆえに逆潮を避けることはできませんが、人生においても、何度か逆潮となった渡を越すような場面があるでしょう。

渡を越す航海では、たとえ友船がいなくても、渡の様子と船の位置と天候を考えながら状況判断し、横風や追風をうまく受けつつ進んでいきます。もし風が変わっても港まで3キロくらいなら、櫓や櫂でなんとかなると思っていなくてはなりません。

人生の重要な局面と同じく、サッカーの試合も渡を越す気持ちで乗り越えます。敵の出方を知り、自分の技量を冷静に見つめ、渡を越すわけですが、良い試合とは、優れた船長による航海と同じです。大きな困難に向かっていっても、その力によって、渡の向こう側に確実に到達するのです。敵の弱みを見つけ、主導権を握って試合を進めさえすれば、勝利を必ず得ることができます。

ひとつひとつの試合だけでなく、いろいろな局面においても、渡を越す気持ちが求められます。じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 とをこすと云事。

渡をこすと云ハ、縱ば海をわたるに、せとゝいふ所も有、又は、四十里五十里とも長き海をこす所を、渡と云。人間の世をわたるにも、一代のうちにハ、渡をこすと云所多かるべし。

舩路にして、其との所を知り、舟の位をしり、日なミを能知りて、たとひ友舩は出さずとも、その時のくらゐをうけ、或はひらきの風にたより、或は追風をもうけ、若、風かはりても、二里三里は、ろかひ*をもつて湊に着と心得て、舩をのりとり、渡を越す所也。

其心を得て、人の世を渡るにも、一大事にかけて、渡をこすと思ふ心有べし。兵法、戦のうちに、渡をこす事肝要也。敵の位をうけ、我身の達者をおぼへ、其理をもつてとをこす事、よき船頭の海路を越すと同じ。渡を越てハ、又心安き所也。渡を越といふ事、敵によはミをつけ、我身先になりて、大かたはや勝所也。

大小の兵法のうへにも、とをこすと云心、肝要也。能々吟味有べし。

 

注釈

渡の厳しさをわかりやすくするために逆潮のことを加えました。


06. 4月 2012 by outsidervoice
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