39) 水之巻 ★ プレッシャーの受け方3種

サッカー語訳

敵が向かってくるときに、そのプレッシャーを受けるには3種の方法があります。ひとつは、敵の正面に向かっていくように見せながら、さっと横にずれて、敵の力を脇にそらせる方法。そして、敵の力を一度、身体の片側や背でしっかりとブロックする方法。あるいは、敵が向かってくることを気にせず、姿勢を低くして敵の懐に入り込んで受け止める方法。3つの方法ではどれも、敵の顔の位置と距離によって、受け止めるタイミングを計るようにします。繰り返し練習することが必要です。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 三つのうけの事。

三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつく様にして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打時、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのみかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 

注釈

解釈が難しい文です。


24. 3月 2012 by outsidervoice
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40) 水之巻 ★ 面を刺す

サッカー語訳

敵と競り合う時、敵の顔に向かって行くつもりで仕掛けていくことを、面を刺すと言います。敵の顔に向かっていく気持ちがあれば、敵の顔や身体が引き気味になり、いろいろなプレーを有利な立場で仕掛けることができます。敵がのけぞったところで、既に勝負は付いていると言えるでしょう。日頃の練習から、面を刺すことを忘れないようにして、そのコツを習得してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 面をさすと云事。

面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それによつて、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうちに、此利、鍛練有べきもの也。

 

注釈

特にありません。


23. 3月 2012 by outsidervoice
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41) 水之巻 ★ 心(しん)を刺す

サッカー語訳

試合の中で、敵が目の前立ちふさがって、上にも横にもボールの出しようが無いときに、敵の身体の中心線を狙って当てることを、心を刺すと言います。身体の中心線にいきなり飛んできたボールは、トラップもコントロールも難しいので、多くの場合、敵はボールを弾くだけになります。タッチラインを割れば、こちらのボールでプレーを再開できます。

これは、疲れてしまった時や、技を出せない時だけに使うものです。無闇に使わないよう注意しましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 心をさすと云事。

心をさすと云ハ、戦のうちに、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事いづれもなりがたきとき、敵をつく事、敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。

若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 

注釈

少しサッカーでの意味合いを補足してあります。


22. 3月 2012 by outsidervoice
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42) 水之巻 ★ 喝咄(かつとつ)

サッカー語訳

あるプレーで敵を追い込んだら、そこで終わるのではなく、敵がすぐに反撃してくることを想定し、瞬時に次のプレーを重ね、優位をより確実なものにすることを、喝咄と言います。喝咄という掛け声と同じ素早いリズムで、2つのプレーを重ねていくのです。

激しい攻防の時、しばしば必要となるリズムですが、2つのプレーをひとつの技のように続けるのです。練習を重ねて自分のものにしていってください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 かつとつと云事。

喝咄と云ハ、何れも我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへす様なる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事、いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄と打心也。

此拍子、何時も打あいの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 

注釈

特にありません。


21. 3月 2012 by outsidervoice
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43) 水之巻 ★ 張り受け

サッカー語訳

敵の仕掛けとこちらの防御が繰返される単調なリズムになってしまったら、防御を緩め、敵のプレーに同調しながら身体を寄せて、さっとボールを奪います。このことを、張り受けと言います。

強いプレッシャーをかけるのではなく、かつ、受身になるわけでもない状態が、張り合わせる状態です。敵のプレーに合わせながら、身体を寄せるわけですが、寄せきる前に奪うことが大切です。張ることも、奪うことも自分の主導で行うことを意識しましょう。

このリズムを使いこなせるようになれば、敵が勢い良く攻めてきても、さっと張る気持ちに切り替えて対処できます。何度も練習し、吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 はりうけと云事。

はりうけと云ハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合せ、うつ也。

はり合する心ハ、さのみきつくはるにあらず、又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。

はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


20. 3月 2012 by outsidervoice
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44) 水之巻 ★ 多敵(たてき)の場合

サッカー語訳

1人で大勢に対処しなければならない状況を、多敵の場合と言います。

左にも右にも行ける体勢を維持しながら、どちらかのサイドに動いて、多くの敵をそのサイドに引き寄せます。なるべく広い範囲を見ながら、向かってくる敵にも対応するわけですが、左へのフェイントで右の敵を、右へのフェイントで左の敵を切るようにすれば、流れに乗ったひとつの動きで、向かってきた二人を一度に切ることができます。

サイドに流れて行くと、自分に対して敵が直線状に並ぶ瞬間があります。その瞬間に、その直線に向かって一気に切り込みます。敵が詰まりすぎているところは先に進めなくなるので避けます。また、敵が来るのを待っていても先には進めません。真横からの攻撃は守備が難しいものですが、その嫌な攻撃を受けた敵のリズムの混乱に乗じて、次々と切っていくのです。

ときどき一対多の練習をしてコツがわかってくれば、多人数相手の局面でも落ち着いてプレーできるようになります。よく練習して、体得してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 多敵の位の事。

多敵のくらゐと云ハ、一身にして大勢と戦ときの事也。

我刀脇指をぬきて、左右へ廣く太刀を横に捨て、搆る也。敵は四方よりかゝるとも、一方へおひまはす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくづして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。

いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむ所、ひたとおひまはしぬれバ、はか行がたし。又敵の出るかた/\と思ヘバ、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。

おり/\相手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十、二十の敵も、心安き事也。能稽古して吟味有べき也。

 

注釈

様々な置き換えについて、皆さんも吟味してください。


19. 3月 2012 by outsidervoice
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45) 水之巻 ★ 一対一での勝利

サッカー語訳

主に一対一で勝つ方法について書いてきたわけですが、これがサッカーの法則の把握、つまり勝利につながります。この点について細かく説明することはできませんが、日々の練習で勝ち方を掴んでいくことが、サッカーの正しい道を歩むということです。(この項目は、聞き書きとして後に加えられたもの)

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 打あひの利の事。

此打あひの利と云事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。(能)稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の実の道を顕す太刀也。(口傳)

 

注釈

聞き書きのこの部分、やはり少し唐突というか、空気が違います。


18. 3月 2012 by outsidervoice
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46) 水之巻 ★ 1つのプレー

サッカー語訳

その瞬間に選択するのはたった1つのプレーです。その1つのプレーが勝利を左右します。サッカーの法則を掴むこと無しに、1つのプレーを正しく選択することはできません。そのことを心に命じて日々鍛錬すれば、サッカーの法則と一体になり、思うままに勝てるようになります。しっかり練習しましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 一つの打と云事。

此一つの打と云心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法よく学ざれバ、心得がたし。此儀、よく鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもうまゝに勝道也。能々稽古すべし。

 

注釈

特にありません。


17. 3月 2012 by outsidervoice
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47) 水之巻 ★ 直通(じきつう)の度合い

サッカー語訳

「二天一流」の真実と通じることを、直通と言います。日々の鍛錬と、「二天一流」と一体になる気持ちが、その度合いを左右します。(この項目は、聞き書きとして後に加えられたもの)

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 直通の位と云事。

直通の心、二刀一流の實の道をうけて傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。(口傳)

 

注釈

特にありません。


16. 3月 2012 by outsidervoice
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48) 水之巻 ★ この巻のおわりに

サッカー語訳

以上のように、「二天一流」の技術の概要を、この巻に記しました。

サッカーにおいて敵に勝つためには、まず、5つのボールの位置とその位置での基本的切り方を習得します。そして、さらにいろいろな切り方、身体の使い方、心の持ち方、リズムを習得すると、プレーの切れ味が増し、身体も脚も思うままに動くようになります。また、法則に対する理解が進むにつれて、だんだん強い敵に勝てるようになり、正しい法則とそうでない法則の違いもわかるようになります。

この書に書かれていることを、ひとつずつ練習して、実戦で試し続ければ、確実に力が付いていきます。この書の内容を常に考え続け、自分の身体とボールを使って試し納得し、どんな敵とも真剣に対戦し、その戦いを分析し、焦ることなくじっくりと、一歩ずつ長い道のりを歩んでください。

何年かかろうともサッカーの法則を掴み出すことがサッカープレーヤーの役割と心得え、この書物が指し示している道を逸れないように気をつけつつ、きょうは昨日の自分に勝ち、明日弱い敵に勝ったら、明後日は強い敵に勝つというように、前に進んで行くのです。強敵に勝ったとしても、習得したことと違うプレーで勝ったのなら、それは正しい勝利ではありません。正しい勝利を心に浮かべてみましょう。そこには1人で何人もの敵に勝つための法則があるはずです。知恵の力によって、サッカーの法則を自分のものにしましょう。目的を成し遂げるためには、千日の練習は単なる始まりであり、万日の練習が必要です。じっくりと吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

右書付所、一流の劔術、大かた、此巻に記し置事也。

兵法、太刀をとつて人に勝處を覚るハ、先、五つの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、惣躰やはらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝ、ほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、[以下不連続]

此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道も、ひと足宛はこぶ也。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、[以下不連続]

今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事におゐてハ、實の道に有べからず。此利、心にうかミてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。

 

注釈

不連続な部分は、不完全な草稿であったためでしょうか。訳文では、つなげています。


15. 3月 2012 by outsidervoice
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49) 火之巻 ★ この巻のはじめに

サッカー語訳

実戦での勝敗を分けるポイントについて、戦いの流れと同じように激しく変化する火にちなみ、この火之巻に書いていきます。

サッカーでの勝利というと、多くの人が瑣末なものを思い浮かべます。足先でボールを浮かせて相手の足首10センチ15センチ上をきれいに抜いて勝ったとか、ステップオーバーしたあと股抜きパスを通して勝ったとか、スピードを生かして相手より先にボールに追いついて勝ったとか・・・。これらはすべて、目の前の小さな勝ちを目的として行われているプレーです。

しかし私の流派のサッカーとは、生きるか死ぬかの戦いを通して、ボールの扱い方や蹴り方や、敵のプレー癖の察知の仕方を体得したものです。鍛錬も、敵に完勝するためにしているのであって、瑣末な勝利は眼中にありません。命を懸けた試合において、たとえ自分1人で5人10人を相手にする局面になっても確実に勝ちを得るための法則。それが私の「二天一流」です。それを知れば、何人が相手でも、どんなプレーヤーやチームが相手でも勝てるということです。

全世界のプレーヤーやチームを集めて、力を試してみることは不可能です。しかし、たとえ1人で練習していても、様々な敵の戦略や得意とするプレーや特徴あるスタイルを想像し、自分の知識と思考を総動員すれば、彼らに勝つ方法を編み出していくことができます。サッカーの達人となれる者、サッカーの法則を極める者は自分以外におらず、そこに何としても到達するのだと自分に言い聞かせながら、日夜練習に励み、鍛え抜き、自在なプレー、超越したプレーができる、不思議な力を持った特別な存在となることを目指すのです。これが、サッカーの法則を掴み出そうとするプレーヤーの気概です。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

二刀一流の兵法、戦の事を火に思ひとつて、戦勝負の事を、火之巻として、此巻に書顕す也。

先、世間の人毎に、兵法の利をちいさくおもひなして、或ハゆびさきにて、手くび五寸三寸の利をしり、或ハ扇をとつて、ひぢより先の先後のかちをわきまへ、又ハしなひなどにて、わづかのはやき利を覚へ、手をきかせならひ、足をきかせならひ、少の利のはやき所を専とする事也。

我兵法におゐて、数度の勝負に、一命をかけてうち合、生死二つの利をわけ、刀の道を覚へ、敵の打太刀の強弱を知り、刀のはむねの道をわきまへ、敵をうちはたす所の鍛練を得るに、ちいさき事、弱き事、思ひよらざる所也。殊に六具かためてなどの利に、ちいさき事、思ひいづる事にあらず。されバ、命をはかりの打あひにおゐて、一人して五人十人ともたゝかひ、其勝道をたしかにしる事、我道の兵法也。然によつて、一人して十人に勝、千人をもつて万人に勝道理、何のしやべつあらんや。能々吟味有べし。

さりなから、常/\の稽古の時、千人万人をあつめ、此道しならふ事、なる事にあらず。獨太刀をとつても、其敵/\の智略をはかり、敵の強弱、手だてを知り、兵法の智徳をもつて、萬人に勝所をきはめ、此道の達者となり、我兵法の直道、世界におゐて、たれか得ん、又いづれかきはめんと、たしかに思ひとつて、朝鍛夕錬して、みがきおほせて後、獨自由を得、おのづから奇特を得、通力不思儀有所、是兵として法をおこなふ息也。

 

注釈

特にありません。


14. 3月 2012 by outsidervoice
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50) 火之巻 ★ 場を味方にする

サッカー語訳

場については、太陽を背にするというポイントがあります。相手から見たときになるべく太陽と重なる位置に立つということです。太陽を背に出来ない場合は、太陽が右手後ろにあるようにします。ドームでもナイターでも光源を後ろか右側にすることは同じです。真後ろか右手後ろに光源がある有利な位置を保てるようになるべく左側に動けるスペースをつくっておくようにします。

また、敵を見下ろすと言って、敵より高い位置にいるかのように、全体を俯瞰する気持ちでいることが大切です。

(光源との関係が崩れる場合もありますが)右利きの場合、敵を自分の左側に動かすようにすると(あるいは自分の身体の向きを、そういう位置関係になるようにすると)、プレーがしやすくなります。できれば、敵同士が重なってしまう位置や、反則に敏感になるペナルティーエリアなど、敵が動きにくい場所へと、追い詰めていきたいものです。

追い詰めていく過程では、攻めを途切れさせないようにして、敵に周囲を確認する余裕を与えないようにしましょう。「敵に場を見せず」ということです。場を確認する余裕が敵になければ、こちらのプレーヤーに対するマークが甘くなるだけでなく、敵のプレーヤー自体が敵の動きを妨げる障害物となります。

いずれにしても、勝利のために場の効果を最大限に利用できるよう、敵がどういう場所で動きにくいかをよく吟味し、日々練習を重ねましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 場の次第と云事。

場の位を見分る所、場におゐて、日をおふと云事有。日をうしろになして搆る也。若、所により、日をうしろにする事ならざる時ハ、右の脇へ日をなす様にすべし。座敷にても、あかりをうしろ、右わきとなす事、同前也。うしろの場つまらざる様に、左の場をくつろげ、右脇の場をつめて、搆へたき事也。よるにても、敵のミゆる所にてハ、火をうしろにおひ、あかりを右脇にする事、同前と心得て、搆べきもの也。

敵を見おろすと云て、少も高き所に搆るやうに心得べし。座敷にてハ、上座を高き所と思ふべし。

さて、戦になりて、敵を追まはす事、我左のかたへ追まハす心、難所を敵のうしろにさせ、何れにても難所へ追かくる事、肝要也。

難所にて、敵に場をみせず、といひて、敵にかほをふらせず、油断なくせりつむる心也。座敷にても、敷居、鴨居、戸障子、椽など、又、柱などの方へ、おひつむるにも、場をみせずと云事、同前也。

いづれも敵を追懸る方、足場のわろき所、又ハわきにかまひの有所、何れも場の徳を用て、場の勝を得と云心専にして、能々吟味し、鍛錬有べきもの也。

 

注釈

置き換えの適切さを、ぜひ吟味してください。私なりの補足が入っています。


13. 3月 2012 by outsidervoice
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51) 火之巻 ★ 3つの先(せん)

サッカー語訳

戦闘開始時における主導権の獲得を、先(せん)という一字で表します。その3種とは、自分から仕掛けていく時の懸(けん)の先、敵から仕掛けてきた時の待(たい)の先、自分も敵も仕掛け合う時の躰々(たいたい)の先です。どういう戦闘でも、この3種以外の先はありません。先次第で、開始直後に勝負が決してしまうこともありますから、これらの先はサッカーにおいて最も重要です。その先に至る方法にはいろいろとあるのですが、共通する必要要素は、正しい状況判断と、敵の意図を見抜くこと、そして「二天一流」の知恵です。

まずは、自分から仕掛けた時の懸の先のいくつかのパターンについて記していきます。静かにしておいて、突然スピードを上げる先。動作は速く、心は冷静沈着に保っておく先。強い気持ちで、敵に少しだけ早足に近づき、近づいた途端、猛烈に攻めたてる先。全てを忘れ一心に、最初から最後まで同じプレーを突き通して、敵を圧倒する先。これらのどれもが、懸の先です。

次に、敵が仕掛けてきた時の待の先について。敵の仕掛けに反応することもできない弱々しい存在に見せておいて、敵が近づいてきたらずんと勢いよく離れ、今度は反対に飛びかかる素振りを見せ、敵が動揺した瞬間を見逃さず、一気に強く出る先。あるいは、敵が向かってきたら、それ以上の勢いで向かって行き、敵が思わず勢いを抑える瞬間を狙う先。

最後に、お互いが仕掛け合う時の躰々の先について。素早く向かってくる敵に対し、自分はスピードではなく強さを保つことに集中し、近づいた敵が強い構えに対しスピードを落とすのを狙って、攻勢に出る先。ゆっくりと向かってくる敵に対しては、軽い身のこなしで素早く近づき、敵の出方を伺うプレーを仕掛けながら隙を狙う先。

これらの先について細かく書くことは難しいのですが、ここに書いてあることを参考に、自分でいろいろと工夫をしてみてください。先は、先制攻撃の場合の懸の先だけでばないのですが、できれば、自分から仕掛けて敵を翻弄したいものです。いずれにしても、先による勝利とは、サッカーの知恵を使って得る勝利のひとつです。日々、鍛錬を続けてください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 三つの先と云事。

三つの先、一つハ我方より敵へかゝる先、けんの先といふ也。又一つハ、敵より我方へかゝる時の先、是ハたいの先と云也。又一つハ、我もかゝり、敵もかゝりあふときの先、躰々の先と云。これ三つの先也。何の戦初にも、此三つの先より外ハなし。先の次第をもつて、はや勝事を得ものなれバ、先と云事、兵法の第一也。此先の子細、さま/\有といへども、其時々の理を先とし、敵の心を見、我兵法の智恵をもつて勝事なれバ、こまやかに書分る事にあらず。

第一、懸の先。我懸らんとおもふ時、静にして居、俄にはやく懸る先、うへを強くはやくし、底を残す心の先。又、我心をいかにも強くして、足ハ常の足に少はやく、敵のきハへよると、早もミたつる先。又、心をはなつて、初中後同じ事に、敵をひしぐ心にて、底まで強き心に勝。是、何れも懸の先也。

第二、待の先。敵我方へかゝりくる時、少もかまはず、よはきやうにミせて、敵ちかくなつて、づんと強くはなれて、とびつくやうにミせて、敵のたるミを見て、直に強く勝事。これ一つの先。又、敵かゝりくるとき、我もなを強くなつて出るとき、敵のかゝる拍子の替る間をうけ、其まゝ勝を得事。是、待の先の理也。

第三、躰々の先。敵はやく懸るにハ、我静につよくかゝり、敵ちかくなつて、づんとおもひきる身にして、敵のゆとりのミゆる時、直に強く勝。又、敵静にかゝるとき、我身うきやかに、少はやくかゝりて、敵近くなつて、ひともミもみ、敵の色にしたがひ、強く勝事。是、躰々の先也。

此儀、こまかに書分けがたし。此書付をもつて、大かた工夫有べし。此三つの先、時にしたがひ、理にしたがひ、いつにても我方よりかゝる事にハあらざるものなれども、同じくハ、我方よりかゝりて、敵を自由にまはしたき事也。何れも先の事、兵法の智力をもつて、必勝事を得る心、能々鍛錬有べし。

 

注釈

特にありません。


12. 3月 2012 by outsidervoice
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52) 火之巻 ★ 枕を押さえる

サッカー語訳

敵の頭をもたげさせないことを、枕を押さえると言います。

敵に主導権を取られ翻弄されれば、戦いは非常に不利となります。どうにかして、こちらの思うままに敵を動かしたいものです。しかし、そのように考えているのは敵も同じで、敵の攻撃にうまく対応できなければ、こちらの思うようにはなりません。ゲームをコントロールするためは、敵の攻撃や進撃を抑えこみ、そして守備を整える動きも抑えこみます。

そのためには、サッカーの本質に適ったプレーを続けながら、敵の意図を気配のうちに察して、敵が実行に移し始めた瞬間に押さえ込み、行動を完結させないことが必要です。フェイントの「フ」の段階で押さえ込む、蹴るの「け」の段階で押さえ込む、ワンツーの「ワ」の段階で押さえ込むというようなことです。

また、敵が勝利の役に立たないプレーをしているならば自由にさせ、役に立つプレーをしようとするときだけ抑えこむのが、サッカーにおいては重要です。

しかし、押さえ込もう、押さえ込もうと思っていると、敵のプレーの後追いになってしまいます。自分は正しいプレーを続けながらも、敵のプレーを次々と端緒のうちに刈り取って、敵が役に立つことを何もできない状態にするのが、鍛錬を積んだサッカーの達人です。

枕を押さえることを、じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 枕を押ると云事。

枕をおさゆるとハ、かしらをあげさせずと云所也。

兵法勝負の道にかぎつて、人に我身をまはされて、あとにつく事、悪し。いかにもして、敵を自由にまはしたき事也。然によつて、敵も左様に思ひ、われも其心あれども、人のする事をうけがはずしてハ、叶がたし。兵法に、人のうつ所をとめ、つく所をおさへ、くむ所をもぎはなしなどする事也。

枕を押ると云ハ、我実の道を得て、敵にかゝりあふ時、敵何事にても思ふ氣ざしを、敵のせぬうちに見しりて、敵の打と云、うの字のかしらをおさへて、跡をさせざる心、是枕をおさゆる心也。たとヘバ、敵の懸ると云、かの字(のかしら)をおさへ、飛と云、との字のかしらをおさへ、きると云、きの字のかしらをおさゆる事、ミなもつておなじ心也。

敵我にわざをなす事につけて、役にたゝざる事をば敵に任せ、役に立ほどの事をバ、おさへて、敵にさせぬやうにする所、兵法の専也。

これも、敵のする事をおさへん/\とする心、後手也。先、我は何事にても、道にまかせてわざをなすうちに、敵もわざをせんと思ふかしらをおさへて、何事も役にたゝせず、敵をこなす所、是、兵法の達者、鍛錬の故也。

枕をおさゆる事、能々吟味有べき也。

 

注釈

特にありません。


11. 3月 2012 by outsidervoice
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53) 火之巻 ★ 渡(と)を越す

サッカー語訳

陸と陸とに挟まれた海峡の中には長さが160~200キロに及ぶものがありますが、それを渡(と)と言います。その長さゆえに逆潮を避けることはできませんが、人生においても、何度か逆潮となった渡を越すような場面があるでしょう。

渡を越す航海では、たとえ友船がいなくても、渡の様子と船の位置と天候を考えながら状況判断し、横風や追風をうまく受けつつ進んでいきます。もし風が変わっても港まで3キロくらいなら、櫓や櫂でなんとかなると思っていなくてはなりません。

人生の重要な局面と同じく、サッカーの試合も渡を越す気持ちで乗り越えます。敵の出方を知り、自分の技量を冷静に見つめ、渡を越すわけですが、良い試合とは、優れた船長による航海と同じです。大きな困難に向かっていっても、その力によって、渡の向こう側に確実に到達するのです。敵の弱みを見つけ、主導権を握って試合を進めさえすれば、勝利を必ず得ることができます。

ひとつひとつの試合だけでなく、いろいろな局面においても、渡を越す気持ちが求められます。じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 とをこすと云事。

渡をこすと云ハ、縱ば海をわたるに、せとゝいふ所も有、又は、四十里五十里とも長き海をこす所を、渡と云。人間の世をわたるにも、一代のうちにハ、渡をこすと云所多かるべし。

舩路にして、其との所を知り、舟の位をしり、日なミを能知りて、たとひ友舩は出さずとも、その時のくらゐをうけ、或はひらきの風にたより、或は追風をもうけ、若、風かはりても、二里三里は、ろかひ*をもつて湊に着と心得て、舩をのりとり、渡を越す所也。

其心を得て、人の世を渡るにも、一大事にかけて、渡をこすと思ふ心有べし。兵法、戦のうちに、渡をこす事肝要也。敵の位をうけ、我身の達者をおぼへ、其理をもつてとをこす事、よき船頭の海路を越すと同じ。渡を越てハ、又心安き所也。渡を越といふ事、敵によはミをつけ、我身先になりて、大かたはや勝所也。

大小の兵法のうへにも、とをこすと云心、肝要也。能々吟味有べし。

 

注釈

渡の厳しさをわかりやすくするために逆潮のことを加えました。


10. 3月 2012 by outsidervoice
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54) 火之巻 ★ 景気を知る

サッカー語訳

敵チーム全体の状況や勢いや流れを把握することを、景気を知ると言います。試合では、敵の勢いの盛衰やシステムの意図や各プレーヤーのポジショニングや動きを把握することで景気を知り、それに対し自チームは、サッカーの法則、先(せん)を正しく理解した戦略で応戦します。

また、一対一でも、敵のスタイルや強弱や性格を把握し、敵の慣れていないプレーを仕掛け、敵の調子やリズムの変化を見逃さないことによって、先(せん)を獲得します。

どんなものの景気も、知力が優れていれば必ず見えてくるものです。思うようにプレーできる力と敵の心を読む力が合わされば、勝ち方のバリエーションがとても豊富になります。いろいろと工夫してみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 けいきを知と云事。

景氣をみると云ハ、大分の兵法にしてハ、敵のさかへ、おとろへを知り、相手の人数の心を知り、其場の位をうけ、敵のけいきを能見分、我人数何としかけ、此兵法の理にてたしかに勝と云ところをのミ込て、先の位をしつて戦所也。

又、一分の兵法も、敵のながれをわきまへ、相手の強弱、人がらを見分け、敵の氣色にちがふ事をしかけ、敵のめりかりを知り、其間の拍子をよく知て、先をしかくる所、肝要也。

物毎のけいきといふ事ハ、我智力強けれバ、かならずミゆる所也。兵法自由の身になりてハ、敵の心を能斗て勝道多かるべき事也。工夫有べし。

 

注釈

特にありません。


09. 3月 2012 by outsidervoice
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55) 火之巻 ★ 剣を踏む

サッカー語訳

剣を踏むとは、戦いについて語るときにのみ使われる言葉です。試合で敵が畳み掛けるように攻勢に出てきた時、その攻勢が終わるのを待って反撃しても、その反撃のタイミングでは既に敵が守備と次の攻勢への体制を整えていて、こちらの思うように押し返すことができません。敵の攻撃に対してその最中に素早く反撃すれば、敵の攻撃を防ぐだけでなく、敵が守備に入る時間もないため、一気に攻勢に出ることができます。敵の攻撃(剣)を踏みつけるようにして反攻するのです。

一対一においても、敵のプレーに受身で反応するだけでは、仕掛けと受けが単調に繰返されるばかりです。敵が仕掛けてきたプレーに対しては、それを踏み潰す気持ちで途切れさせ、次のプレーに移れないようにします。

「踏む」というのは単に敵のプレーの芽を摘むことだけではなく、精神的にも相手を「踏む」ということです。敵の自信も奪い取り、その試合で復活できないようにするのです。これも、先(せん)に至る道筋です。

これは単に、敵と同時に仕掛けて正面からぶつかるということではありません。敵のプレーに対しすぐに、圧倒的に応じるということです。よく吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 けんをふむと云事。

劔を踏と云心ハ、兵法に専用る儀也。先、大なる兵法にしてハ、弓鉄炮におゐても、敵、我方へうちかけ、何事にてもしかくる時、敵の弓鉄炮にてもはなしかけて、其跡にかゝるによつて、又矢をつがひ、鉄炮にくすりをこみ合するによつて、又新しくなつて追込がたし。弓鉄炮にても、敵のはなつ内に、はやかゝる心也。はやくかゝれバ、矢もつがひがたし、鉄炮もうち得ざる心也。物ごとに敵のしかくると、其まゝ其理をうけて、敵のする事を踏付てかつこゝろ也。

又、一分の兵法も、敵の打出す太刀の跡へうてバ、とたん/\となりて、はかゆかざる所也。敵のうち出す太刀ハ、足にて踏付る心にして、打出す所を勝、二度目を敵の打得ざる様にすべし。

踏と云ハ、足には限るべからず。身にてもふミ、心にても蹈、勿論太刀にてもふミ付て、二の目を敵によくさせざる様に心得べし。是則、物毎の先の心也。

敵と一度にと云て、ゆきあたる心にてハなし。其まゝ跡に付心也。能々吟味有べし。

 

注釈

置き換えを吟味してみてください。


08. 3月 2012 by outsidervoice
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56) 火之巻 ★ 崩れを知る

サッカー語訳

あらゆる物事に、崩れがあります。家(一族や企業)の崩れ、身を崩すこと。そして、あるきっかけで流れに乗れなくなった敵も崩れます。

試合では、敵のリズムが崩れてきたところを逃さず追い詰めます。そのタイミングを逃せば、敵に立ち直るチャンスを与えることになります。

一対一の局面でも試合展開と同じく、戦いの流れの中に敵のリズムが変わる崩れ目があり、そのタイミングを逃さないことが大切です。崩せるタイミングが来たら、集中した強い気持ちで確実に敵を打ち砕くのです。

打ち砕くとはどのようなことでしょうか。打ち砕かなければ、敵の抵抗力が残ったままになるのです。練習の中で、いろいろと確かめてみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 くづれを知と云事。

崩と云事ハ、物毎に有もの物也。其家の崩るゝ、身のくづるゝ、敵の崩るゝ事も、時にあたりて、拍子ちがひになつて、くづるゝ所也。

大分の兵法にしても、敵の崩るゝ拍子を得て、其間をぬかさぬやうに追立る事、肝要也。くづるゝ所のいきをぬかしてハ、たてかへす所有べし。

又、一分の兵法にも、戦ふ内に、敵の拍子ちがひて、くづれめのつくもの也。其ほどを油断すれば、又立かへり、新しくなりて、はかゆかざる所也。其くづれめにつき、敵のかほたてなをさゞる様に、たしかに追かくる所、肝要也。追かくるハ、直に強きこゝろ也。敵立かへさゞるやうに、打はなすもの也。

うちはなすと云事、能々分別有べし。はなれざれバ、したるき心あり。工夫すべきもの也。

 

注釈

特にありません。


07. 3月 2012 by outsidervoice
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57) 火之巻 ★ 敵になる

サッカー語訳

敵になりきって考えることを、敵になると言います。

世の中のことで例をあげますと、盗みなどを働いて家に籠城している者を、強そうに思って非常に恐れてしまうことがありますが、敵になりきって考えれば、周囲の人たち全員に追われている気持ちで逃げ込んでいるのであって、至って心細いものです。篭城している者はキジで、捕まえようとしている者は鷹なのです。敵になれば、状況が正確に見えてきます。

敵チームを警戒しすぎて大げさな準備をしてしまうことが、しばしばあります。しかし、自チームに良いメンバーが揃っていて、サッカーの法則を皆が理解し、敵に勝つ気持ちも強いのであれば、気にすることは何もないはずです。

一対一でも、敵になりきって考えることが大切です。サッカーの法則をよく知り、日々鍛錬を続け達人となっている自分を目の前にした敵に、勝つ自信があるはずはありません。

じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 敵になると云事。

敵になると云ハ、我身を敵になり替りておもふべきと云所也。

世の中を見るに、ぬすミなどして、家のうちへとり籠るやうなるものをも、敵を強くおもひなすもの也。敵になりておもへバ、世の中の人をみな相手として、にげこミて、せんかたなき心也。とりこもる者ハ雉子也、打はたしに入人ハ鷹也。能々工夫有べし。

大なる兵法にしても、敵といへバ、強くおもひて、大事にかくるもの也。我常によき人数を持、兵法の道理を能知り、敵に勝と云所を能うけてハ、氣づかひすべき道にあらず。

一分の兵法も、敵になりて思ふべし。兵法能心得て、道理強く、其道達者なる者にあひてハ、かならず負ると思ふ所也。

能々吟味すべし。

 

注釈

特にありません。


06. 3月 2012 by outsidervoice
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58) 火之巻 ★ 四手(よつで)を放す

サッカー語訳

がっぷりと組み合った手を四手と言います。敵もこちらも同じ事を考えて張り合っていれば(四手になっていたら)戦いは終わりません。そういう時は、気持ちを切り替えて(四手を放し)、別のプレーで勝つことを狙います。

試合が四手ならば、勝負とは関係ないことに体力を消耗し続けている状態です。張り合うことを早く止めて、敵の裏をかくプレーで勝ちを得るべきです。

一対一でも、四手になる気配を感じたら、その時の敵の態勢では反応できないプレーに即座に切り替えて勝つことが肝心です。

方法をいろいろと考えてみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 四手をはなすと云事。

四手をはなすとハ、敵も我も、同じこゝろに、はりあふ心になつては、戦はかゆかざるもの也。はりあふ心になるとおもハヾ、其まゝ心を捨て、別の利にて勝事をしる也。

大分の兵法にしても、四手の心にあれば、はかゆかず、人も多く損ずる事也。はやく心を捨て、敵のおもはざる利にて勝事、専也。

又、一分の兵法にても、四手になるとおもハヾ、其まゝ心をかへて、敵の位を得て、各別かはりたる利を以て勝をわきまゆる事、肝要也。

能々分別すべし。

 

注釈

特にありません。


05. 3月 2012 by outsidervoice
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59) 火之巻 ★ 陰(かげ)を動かす

サッカー語訳

隠れていて見えない敵の守備戦術を、陰と言います。

試合において、敵がどこに守備の重点を置いているかが見えない時には、こちらから一気に攻撃に出るように見せて、それに対する敵の反応(陰の動き)を見ます。対応の仕方がわかれば、それを外す攻撃によって勝つことができます。

一対一の局面では、相手がこちらの攻撃を誘い込む態勢の時がありますが、少しつっかけてみれば、敵の意図が態勢の変化(陰の動き)として表れます。それを見てプレーを仕掛ければ、確実に勝つことができます。

しかし、油断していると、つけ入るタイミングを逃してしまいます。

練習で吟味を繰り返してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 かげをうごかすと云事。

かげをうごかすと云ハ、敵の心のミへわかぬ時の事也。

大分の兵法にしても、何とも敵の位の見わけざる時ハ、我方より強くしかくる様にみせて、敵の手だてを見るもの也。手だてを見てハ、各別の利にて勝事、やすき所也。

又、一分の兵法にしても、敵うしろに太刀を搆、脇に搆たる様なるときハ、ふつとうたんとすれバ、敵思ふ心を太刀にあらはすもの也。あらはれしるゝにおゐてハ、其まゝ利をうけて、たしかにかちをしるべきもの也。

油断すれバ、拍子ぬくるもの也。

能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


04. 3月 2012 by outsidervoice
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60) 火之巻 ★ 影を押さえる

サッカー語訳

影とは、敵の攻撃開始のスイッチ、合図のことです。

試合で、敵の攻撃開始のスイッチ(影)を発するプレーヤーやプレーを強く押さえ込み続ければ、敵は攻撃の狙いを変えざるを得ません。その時こちらは、影に向けていた意識をまっさらにして、先(せん)による勝利を狙います。

一対一でも、敵に攻撃開始の強い気持ちが立ち上がる気配が見えた時には、相手のリズムを狂わせ、気持ちが途切れたところを狙って、こちらが先(せん)を得るようにします。

いろいろと工夫してみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 影をおさゆると云事。

かげを押ると云ハ、敵のかたより、しかくる心の見ヘたるときの事也。

大分の兵法にしてハ、敵のわざをせんとする所を、おさゆると云て、我方より其利を押る所を、敵に強く見すれば、強きにおされて、敵の心かはる事也。我も心をちがへて、空なる心より、先をしかけて勝所也。

一分の兵法にしても、敵のおこる強き氣ざしを、利の拍子を以てやめさせ、やみたる拍子に、我勝利をうけて、先をしかくるもの也。

能々工夫有べし。

 

注釈

特にありません。


03. 3月 2012 by outsidervoice
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61) 火之巻 ★ 感染す(うつす)

サッカー語訳

眠気、あくびなども感染りますが、「うつる」ということでは時が移るということもあります。

試合において、気勢の上がった敵が一気に畳み掛けようとしている時には、まったく気にしていないかのように、ゆったりと構えていると、敵も影響を受けて闘志が弱まってしまうものです。そのように感染ったタイミングで、自分たちは本来の戦う心になって素早く強く仕掛ければ勝つことができます。

一対一においても、身体と心がゆるりとしている状態を敵に見せておいて、それが敵に感染った瞬間に、強く早く仕掛けて勝つのです。

また、感染すと似た酔わせるということがあります。無気力や陽気や弱気に酔わせるのです。

いろいろと工夫してみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 うつらかすと云事。

うつらかすと云ハ、物ごとに有るもの也。或ハねむりなどもうつり、或ハあくびなどもうつるもの也。時の移もあり。

大分の兵法にして、敵うはきにして、ことをいそぐ心のミゆる時は、少もそれにかまはざるやうにして、いかにもゆるりとなりて見すれバ、敵も我事にうけて、きざしたるむもの也。其うつりたると思とき、我方より、空の心にして、はやく強くしかけて、勝利を得るもの也。

一分の兵法にしても、我身も心もゆるりとして、敵のたるみの間をうけて、強くはやく先にしかけて勝所、専也。

又、よハすると云て、是に似たる事有。一つハ、たいくつの心、一つハ、うかつく心、一つハ、弱くなる心。

能々工夫有べし。

 

注釈

時の移りの話がなぜ出てきたのかよくわからないのですが、そのまま、訳してあります。


02. 3月 2012 by outsidervoice
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62) 火之巻 ★ 動揺させる

サッカー語訳

動揺は様々な状況で起こります。危険に遭った時、無理なことに遭った時、そして予想外のことに遭った時など。いろいろと状況を思い浮かべてみましょう。

試合で相手を動揺させることは非常に大切です。敵の予想外のところへ猛烈な攻撃を仕掛けて、敵が対応できず右往左往している間に、先(せん)をもって勝利します。

一対一においても、力を抜いた態勢から不意に強く仕掛けるなど、敵の心の動きや反応を見ながら次々と相手の混乱を招くプレーを重ねれば、勝ちが確実なものとなります。

じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 むかづかすると云事。

むかづかすると云ハ、物毎にあり。一つにハ、きはどき心、二つにハ、むりなる心。三つにハ、思はざる心。能吟味有べし。

大分の兵法にして、むかづかする事、肝要也。敵のおもはざる所へ、いきどふしくしかけて、敵の心のきはまらざるうちに、わが利を以て、先をしかけて勝事、肝要也。

又、一分の兵法にしても、初ゆるりと見せて、俄に強くかゝり、敵の心のめりかり、はたらきにしたがひ、いきをぬかさず、其まゝ利をうけて、かちをわきまゆる事、肝要也。

能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


01. 3月 2012 by outsidervoice
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63) 火之巻 ★ 怯えさす

サッカー語訳

怯える対象は様々ですが、思いもよらないことが起きると怯える気持ちが湧いてきます。

試合で敵を怯えさすことは大事です。声で怯えさすこともできますし、小から大への急激な動作の変化や、脇から不意に出て怯えさすこともできます。効果的に怯えさすリズムを知って勝利しましょう。

一対一では、身体の動き、脚の動き、声などを使って、敵の予期しないことを急に仕掛けて怯えさせ勝ちを得ます。

じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 おびやかすと云事。

おびゆると云ハ、物毎に有事也。思ひもよらぬ事におびゆる心也。

大分の兵法にしても、敵をおびやかす事、肝要也。或ハ、ものゝ聲にてもおびやかし、或ハ、小を大にしておびやかし、又、片脇よりふつとおびやかす事。是おびゆる所也。其おびゆる拍子を得て、其利を以て勝べし。

一分の兵法にしても、身を以ておびやかし、太刀を以ておびやかし、声を以ておびやかし、敵の心になき事、ふつとしかけて、おびゆる所の利をうけて、其まゝ勝を得事、肝要也。

能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


28. 2月 2012 by outsidervoice
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64) 火之巻 ★ 入り混じる

サッカー語訳

敵と優劣のつかない接近戦が続く時は、そのまま敵と入り混じって、混戦の中で主導権を取って勝つようにします。

多数の局面でも少数の局面でも、敵と味方がお互いの陣地で張り合ったまま勝負がつかないときは、敵と味方の陣地の区別が無くなるように入り混じり、自ら混戦に引き込んだ側の優位性を活かして勝利を得ます。

じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 まぶるゝと云事。

まぶるゝと云ハ、敵我ちかくなつて、たがひに強くはり合て、はかゆかざるとミれバ、其まゝ敵とひとつにまぶれあひて、まぶれ合たる其内の利を以て勝事、肝要也。

大分小分の兵法にも、敵我かたわけてハ、たがひに心はりあひて、勝のつかざるときハ、其まゝ敵にまぶれて、たがひにわけなくなるやうにして、其内の徳を得て、其内の勝をしりて、強く勝事、専也。

能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


27. 2月 2012 by outsidervoice
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65) 火之巻 ★ 角(かど)に触る

サッカー語訳

強いものを押すときには、真正面から押してもなかなか動かないものです。そういう時には角を押す(触る)のです。

試合では、敵のプレーヤーが孤立しそうな角を見つけて、適切な方向から崩していきます。角が乱れれば、そこから全体のバランスも乱れていきます。相手のシステムのほころびが見え始めたら、様々な角を連続して攻め続けましょう。勝利がより確実なものとなります。

一対一の局面でも、敵の身体の動きの悪い部分(角)を攻めれば、全体のプレーバランスがおかしくなり、勝つことが容易になります。

角の触り方についてよく考え、体得しましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 かどにさはると云事。

角にさはると云ハ、ものごと、強き物をおすに、其まゝ直にはおしこミがたきもの也。

大分の兵法にしても、敵の人数を見て、はり出強き所のかどにあたりて、其利を得べし。かどのめるに随ひ、惣もミなめる心あり。其める内にも、かど/\に心を付て、勝利を得事、肝要也。

一分の兵法にしても、敵の躰のかどにいたミを付、其躰少も弱くなり、くづるゝ躰になりてハ、勝事安きもの也。

此事能々吟味して、勝所をわきまゆる事、専也。

 

注釈

特にありません。


26. 2月 2012 by outsidervoice
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66) 火之巻 ★ うろめかす

サッカー語訳

どうしていいか分からずうろうろすることを、うろめくと言い、敵に確信を持たせないようにすることを、うろめかすと言います。

試合では、敵の意図を推測し、「二天一流」の知恵で迎え撃ち、敵がそこかここか、あれかこれか、遅いか早いかと、うろめくタイミングで一撃を加えます。

一対一の場合も、流れの中で様々な技を仕掛けます。打つと見せたり、突くと見せたり、入り込むと思わせたりしている間の、敵のうろめく気配を察知して思いのままに勝つのが戦いの要領です。

じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 うろめかすと云事。

うろめかすと云ハ、敵にたしかなる心をもたせざるやうにする所也。

大分の兵法にしても、戦の場におゐて、敵の心をはかり、我兵法の智力を以て、敵の心をそこ爰となし、とのかうのと思はせ、おそしはやしと思はせ、敵のうろめく心になる拍子を得て、たしかに勝所をわきまゆる事也。

又、一分の兵法にして、時にあたりて、色々のわざをしかけ、或ハうつとミせ、或ハつくと見せ、又ハ入こむと思はせ、敵のうろめく氣ざしを得て、自由に勝所、是戦の専也。

能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


25. 2月 2012 by outsidervoice
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67) 火之巻 ★ 3つの声

サッカー語訳

戦いの初めの声、最中の声、終了後の声を、3つの声と言います。このように、出す声はタイミングによって異なるのです。

声とは勢いです。火事に立ち向かうときにも、風波に立ち向かうときにも、声を出しエネルギーを高めます。

試合でも、開始時に出す声は、敵を圧倒するように大きく出します。また、戦いの最中は、音程を低く腹の底から声を出します。そして勝利の後は、大きく強く出す声。

一対一の場面でも、こちらが動くと思わせるために、最初にきっかけの声を発して、敵がそれに反応して動いた後に仕掛けます。

また、シュートを決めた後などに出す勝ちを知らせる声を、先後(せんご)の声と言います。しかし、プレーと同時に大きく声を出すことはありません。プレー中に出すとすればリズムに乗るための低い声です。

じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 三つの聲と云事。

三つのこゑとハ、初中後の聲と云て、三つにかけわくる事也。所により、聲をかくると云事、専也。

聲ハ、いきおひなるによつて、火事などにもかけ、風波にも聲をかけ、勢力をミする也。大分の兵法にしても、戦よりはじめにかくる聲ハ、いかほどもかさを懸て聲をかけ、又、戦間のこゑハ、調子をひきく、底より出る聲にてかゝり、かちて後に大きに強くかくる聲、是三つの聲也。

又、一分の兵法にしても、敵をうごかさんため、打と見せて、かしらより、ゑいと聲をかけ、聲の跡より太刀を打出すもの也。

又、敵を打てあとに聲をかくる事、勝をしらする聲也。これを先後のこゑと云。太刀と一度に大きに聲をかくる事なし。若、戦の中にかくるハ、拍子に乗る聲、ひきくかくる也。

能々吟味有べし。

 

注釈

威嚇の声などは、サッカーでは反則をとられる可能性がありますが・・・。


24. 2月 2012 by outsidervoice
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68) 火之巻 ★ 間切る(まぎる)

サッカー語訳

試合において、敵が強いときには、システム全体を相手にするのではなく、敵の一部に絞って(間切って)攻撃し、そこが崩れる気配を見せたら、今度は他の一部に間切って攻撃します。だいたいジグザグに攻撃を仕掛けることになります。

一対多の場面でも、この要領です。全体を相手にするのではなく、一人ずつに間切って、左の敵から右の敵にと、リズム感良くジグザグに、敵の態勢を冷静に見ながら、切り進むのです。敵の態勢を判断した上で進んで行くわけですから、強く自信を持てば必ず勝てます。

強敵を相手にする一対一でも同じように、敵のプレーや身体を部分ごとに間切る気持ちで戦います。

間切るということに、退くという選択はありません。間切り行く方法や心構えについて、いろいろと考えてみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 まぎると云事。

まぎると云ハ、大分の戦にしてハ、人数をたがひに立合、敵の強きとき、まぎると云て、敵の一方へかゝり、敵くづるゝとミバ、すてゝ、又強き方々へかゝる。大方、つゞら折にかゝる心也。

一分の兵法にして、敵を大勢よするも、此心専也。方々へかゝり、方々にげバ、又強き方へかゝり、敵の拍子を得て、よき拍子に、左、右と、つゞら折の心に思ひて、敵のいろを見合て、かゝるもの也。其敵の位を得、打通るにおゐてハ、少も引心なく、強く勝利也。

一分入身のときも、敵の強きには、其心あり。

まぎると云事、一足も引事をしらず、まぎりゆくと云心、能々分別すべし。

 

注釈

特にありません。


23. 2月 2012 by outsidervoice
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69) 火之巻 ★ 押し潰す

サッカー語訳

敵が弱いところを見せれば、こちらは強気になって敵を押し潰します。

試合では、敵が数的不利となっている局面で、あるいは敵がうろめいて弱みが見える時には、嵩にかかって押し潰す気持ちで攻撃します。敵を手の中で握り潰す気構えです。よく考えてみましょう。

一対一でも、弱い相手に対する時や、敵がリズムを崩した時、後退りしている時には、間髪をおかず、目を合わせず、迷う気持ち無く押し潰すことが大切です。
とにかく、敵が復活できないくらいに圧倒することが肝心です。じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 ひしぐと云事。

ひしぐと云ハ、たとヘバ、敵を弱くみなして、我つよめになつて、ひしぐと云心、専也。

大分の兵法にしても、敵小人数の位を見こなし、又は、大勢なりとも、敵うろめきて、よはミ付所なれバ、ひしぐと云て、かしらよりかさをかけて、おつひしぐ心也。ひしぐ事弱ければ、もてかへす事有。手のうちににぎつてひしぐ心、能々分別すべし。

又、一分の兵法の時も、我手に不足のもの、又は、敵の拍子ちがひ、すさりめになる時、少もいきをくれず、めを見合ざる様になし、真直にひしぎつくる事、肝要也。少もおきたてさせぬ所、第一也。能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


22. 2月 2012 by outsidervoice
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70) 火之巻 ★ 山海の替わり(さんかいのかわり)

サッカー語訳

次々と違うプレーを仕掛けることを、山海の替わりと言います。戦いの中で、同じプレーを何度もするのは良くないことです。2度ならばまだしも、3度は許されないことです。敵に技を仕掛けて、効果が無いようであれば別の技に切り替え、それも効果が無いようであれば、さらに違う技に切り替えます。敵が山を想定しているところに、海を仕掛け、海を予期しているところには山を仕掛けるのがサッカーの基本です。じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 さんかいのかはりと云事。

山海のかはりと云ハ、敵我戦のうちに、同じ事を度々する事、悪敷所也。同じ事、二度ハ是非に及ばず、三度とするにあらず。敵にわざをしかくるに、一度にてもちゐずバ、今一つもせきかけて、其利に及ばずバ、各別かはりたる事を、ぼつとしかけ、夫にもはかゆかずバ、又各別の事をしかくべし。然によつて、敵、山とおもはゞ、海としかけ、海と思はゞ、山としかくる心、兵法の道也。能々吟味有べき事也。

 

注釈

特にありません。


21. 2月 2012 by outsidervoice
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71) 火之巻 ★ 底を抜く

サッカー語訳

敵に勝ったように見える場合でも、敵が闘争心を持ち続けていて、心底では負けていないということがあるものです。そういう様子が見えた場合には、もう一度厳しい気持ちになって、敵の向かってくる気持ちを消滅させ、心底からの敗者になるまで攻撃するのですが、このことを底を抜くと言います。

プレーで底を抜くこともあれば、体力で底を抜くことも、精神で底を抜くこともあり、やり方はひとつだけはありません。

敵の底までが崩れるのは、こちらに中途半端な気持ちが無い時です。敵の底が抜けていないならば、それは中途半端な気持ちで攻撃したからです。徹底的に攻撃する気持ちが無ければ、敵を完全には崩せないのです。

試合でも一対一の局面でも、敵の底を抜くことができるよう日々鍛錬してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 そこをぬくと云事。

底を抜と云ハ、敵と戦に、其道の利をもつて、上ハ勝と見ゆれども、心をたへさゞるによつて、上にてはまけ、下の心はまけぬ事有。其儀におゐては、我俄に替りたる心になつて、敵の心をたやし、底よりまくる心に敵のなる所、みる事専也。

此底をぬく事、太刀にてもぬき、又、身にてもぬき、心にてもぬく所あり。一道にハ、わきまふべからず。底よりくづれたるハ、我心残すに及ばず。さなき時は、残(す)心也。残す心あれば、敵くづれがたき事也。

大分小分の兵法にしても、底をぬく所、能々鍛練有べし。

 

注釈

特にありません。


20. 2月 2012 by outsidervoice
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72) 火之巻 ★ 新たになる

サッカー語訳

新たになるとは、物事を新しく始めると言うことです。もつれた膠着状態の戦いでは、自分のそれまでの気持ちを捨てて、新たになって勝ちを得ます。敵と軋み合っていると感じたらすぐに、戦い方を変更して勝つのです。
新たになるべきタイミングを試合で感知する必要がありますが、サッカーの知恵があればわかるはずです。じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 あらたになると云事。

新に成と云ハ、敵我もつるゝ心になつて、はかゆかざる時、我氣をふり捨て、物毎を新しくはじむる心に思ひて、其拍子をうけて、かちをわきまゆる所也。あらたになる事ハ、何時も、敵と我きしむ心になると思はゞ、其まゝ心をかへて、各別の利を以て勝べき也。

大分の兵法におゐても、新になると云所、わきまゆる事、肝要也。兵法の智力にてハ、忽見ゆる所也。能々吟味有べし。

 

注釈

特にありません。


19. 2月 2012 by outsidervoice
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73) 火之巻 ★ 鼠頭午首(そとうごしゅ)

サッカー語訳

穴から覗いている頭は鼠のようであっても見えない首は馬(うま)の様かも知れません。敵味方ともに小さなところにこだわり縺れた戦いになっている時、「鼠頭午首、鼠頭午首」と心に念じて、その時には見えていない大きな可能性を考えるようにして、さっと展開を大きく切り替えます。サッカーには、このようなイマジネーションが必要なのです。

人の心も鼠頭午首であることを日頃から忘れず、その奥底を想像することが、サッカープレーヤーにとってはとても良い訓練となります。サッカーのどんな局面でも、忘れてはならないことです。じっくり吟味してください。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 そとうごしゆと云事。

鼠頭午首と云ハ、敵と戦のうちに、たがひにこまかなる所を思ひ合て、もつるゝ心になる時、兵法の道を、常に鼠頭午首/\とおもひて、いかにもこまかなるうちに、俄に大きなる心にして、大、小に替る事、兵法一つの心だて也。

平生、人の心も、そとふごしゆと思べき所、武士の肝心也。兵法、大分小分にしても、此心、はなるべからず。此事、能々吟味有べきもの也。

 

注釈

いろいろな解釈のある項目です。いかがでしょうか。


18. 2月 2012 by outsidervoice
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74) 火之巻 ★ 将卒を知る

サッカー語訳

「二天一流」の実践とその知力によって、敵も自チームのメンバーとして思うように動かすことができる状態を、将卒を知るといい、それがサッカーの到達点です。自分たちはチームリーダー(将)であり、敵もそのチームのメンバー(卒)なのです。そこに至るまで、いろいろと工夫してみましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 しやうそつをしると云事。

将卒を知るとハ、何も戦に及とき、我思ふ道に至てハ、たへず此法をおこなひ、兵法の智力を得て、わが敵たるものをバ、ミなわが卒なりと思ひとつて、なしたきやうになすべしと心得、敵を自由にまはさんと思ふ所、われハ将也、敵ハ卒也。工夫有べし。

 

注釈

特にありません。


17. 2月 2012 by outsidervoice
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75) 火之巻 ★ ボールを放す

サッカー語訳

ボールの無いところで勝ちを得ること、あるいは、勝負はボールのあるところで決まるわけではないということを、(思考から)ボールを放すと言います。様々な意味を持ち合わせた言葉で、それを書き尽くすことはできません。日々、練習を続けましょう。

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 つかをはなすと云事。

束をはなすと云に、色々心ある事也。無刀にて勝心有、又、太刀にてかたざる心あり。さま/\心のゆく所、書つくるにあらず。能々鍛練すべし。

 

注釈

束をボールに置き換えました。


16. 2月 2012 by outsidervoice
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76) 火之巻 ★ 巌(いわお)の身

サッカー語訳

サッカーの法則を獲得すれば、何があっても壊れることも動くこともない巌(岩石)のような存在となります。(この項目は、聞き書きとして後に加えられたもの)

 

★ 原文・・・『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より

一 いはをの身と云事。

巖の身と云ハ、兵法を得道して、忽巖のごとくになつて、萬事あたらざる所、うごかざる所。(口傳)

 

注釈

特にありません。


15. 2月 2012 by outsidervoice
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